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「もう無理、もう嫌だ、こんな生活・・・」・・・女性との対話

2024.10.11

 冬の深夜に1本の電話をとると、若い女性のか細い声でした。

「マンションの…、10階のベランダにいる…」

「もう無理、もう嫌だ、こんな生活…」

 もう少し話をきかせてほしい、ベランダから離れて室内に戻りませんかと声をかけますが、風の音だけが聞こえます。どうか切れないでと願いつつ、耳を澄ませ、時々声を掛けながら待っていると、ポツリポツリと話し始めてくれました。

 交際している男性にDVを受けている。無職の彼に1万、2万とお金を渡し、気づけば50万円ほどになってしまった。昨晩もお金を渡すと出て行ったきり、連絡がつかない。つらくて親友にLINEすると「いいかげんに目を覚ましなよ。いつまでそんなクズに依存しているの」と、突き放されてしまったとのこと。もう消えてしまいたいとベランダの手すりに手をかけたけれど、やはり怖くてそのままとどまっていた。以前リストカットしたときに電話した「いのちの電話」にかけてみた、ということでした。

 寒さと悲しさで震える声に耳を傾け、どのくらい時間が経ったでしょうか。ふと彼女がつぶやきました。「きついけど、あったかい親友なんですよ…」そしてその直後「カア」と鳴き声が響きました。

「あー、カラス?ベランダで朝になっちゃった…」

先ほどの凍りついたような口調とは違って、自分を思ってくれる親友がいて、その人の気持ちに温められた心がつぶやいたような声に感じられました。

 ほどなく「部屋に戻りますね」と電話は終わりました。その後彼女がどうしたか、彼とどうなったのか、知ることはできません。でも、一晩踏みとどまり、少し前を向いてくれた力を信じ、彼女の幸せを願い続けています。


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